コトバのコトバ

ボクキキⅣレイカ編3:レイカが濡れた!

「ヒトミくん。今回は、キツいよ」
鬼姫だもんね。

「性格じゃなくて」
あ、違いましたか。

「わたし濡れないんだもん、生まれてから一回も。イクなんて、とんでもないわ」
困る、それ。
ぼくのミッションとしては、先にイッてもらわなければいけないのだ。

「いろんな男の人としたわ。正確にいうと、させられた。事務所の方針」
・・・そんな恨みも、あるのかな。
「でも、いちども濡れなかった。相手の人、みんな苦労していたな。
演歌の大御所Pさん、売れっ子司会者Qさん、名演出家のXさん・・・」
名、とか、大、とか、すごい人ばっかりだ。
小で弱のぼくに、うまくできるだろうか。。。

「さあ、始めてよ。どうせ、しなきゃならないんだから」
レイカはさっさと、スカートと下着を脱ぎ始めた。
そして、ソファに横たわった。

「上は脱がないの?」
「だって、必要なのは、ここだけでしょ?」
ってアソコを指す。
なんだコイツ?アタマに来る。

「最初にキスはしないの?」
「必要があれば、もう、しているわ」
いちいちアタマに来る。
それにしても、どこからどうしようか、と迷っていると、
「触ったり、ナメたりしてみたら?」
他人事だよ、、、ったく。

、で・・・こうかな?
(サワッタリナメタリサワッタリナメタリサワッタリナメタリサワッタリナメタリ・・・)

おいおい、いま雑誌読むなよぉ。
こっちは舌がこすれて、血がにじんでるっていうのに。
つまりそのくらい、ざらざら=まったく濡れてない。
自分で自分の手をナメてるほうが、まだ濡れてる、って感じ。

「結局、あなたも同じ、男はみんな役立たず」

そのひと言で、ぼく、キレました、と思います。
(生まれてからいちども、キレたことがないので、キレる、が、どういうものかわからない・・・)

ぼくは、作業を一時中断して、
「じゃあ、自分でやってみてよ」
「自分で、ってどういうこと?」

そう聞き返されると、恥ずかしいけど。

「・・・オナニー、とか」
彼女も照れくさそうに
「・・・・・」
黙る。

「したことないの?」
「・・・ない」

北風と太陽、というお話がある。
どちらが、旅人のコートを脱がすか、というヤツだ。
お話では、あたたかい太陽が勝つのだが、きっとレイカのまわりは、太陽ばかりだろう。なまあたたかい、ニセモノの太陽。
ならば、北風作戦だ。
彼女のもやもやを、吹き飛ばしてみせる!

ぼくは背負ってたリュックの中を探って、
「あった!」
以前にキツネから、もらったバイブだ。
たしか名前は、ファンタジスタ。

「これ、使って」
彼女は黙って受け取り、、、恥ずかしそうに、、、アソコにそっとあて、、、スイッチを入れた。

・・・動かない。。。アレ?電池切れかな。
彼女が、振ったり、叩いたりしている。
すると、ゆっくり動き出した。

不良品なのか、あのオネーサンにからかわれたのか、
レイカも、責めるようにこっちを見る、や否や、激しい動き。

首を高速で前後左右に振りながら、振動で血行がよくなりそうな、強烈バイブレーション!

ブラームスが、いきなりハードコアパンクに転調したような、奔放な動き。
レイカは、驚きながらも、その動きを受け入れ始める。

そうか、ファンタジスタ=常人の想像を超えた華麗なプレイ、ってことか。
頼れるヤツ。
現場は、任した。

「ちょっと、ぼくの話を聞いてくれる?」
「はいいい、い、い、い、いっ、いっ、い、」
ぶるぶるぶるぶるぶる

「きみは、人形扱いを嫌がっていたけど、自分から人形になってたんじゃないかな?」
「そんな、こ、ここっことととはな、あ、あ、い、い」
ぶるぶるぶるぶるぶる

「いつも誰かが、なんとかしてくれる」
ぶるぶるぶるぶるぶる

「おなかがすいたら、口をあけるだけで、誰かが食べさせてくれる」
ぶるぶるぶるぶるぶるぶる

「ドアを開けてくれる、靴下をはかせてくれる、パンにバターを塗ってくれる」
ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる

「自分では、なにもしないで!」
ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる

「自分から、お人形さんになったんじゃないか!」
「そんんんんんんんなああああああここことななあああああいいいいい」
ぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶるぶる

「こころを閉ざしていても、いつかきっと、誰かが開いてくれる、って思ってるんだ」
ぶるぶるぶる~~ぶる~~んぶるるるるる~~ん

ファンタジスタの動きが変わった。うねるような長いストローク。

「ほんとうはココロを開きたいんだ、素直になりたいんだ」
「そそそ~~~んな~~あ~こととはあ~~」

「セックスも同じ。誰かが濡らしてくれるんじゃない。自分で濡れるんだ!」
(ぼく、力説中・・・なまいき?)

「湧き出る液こそが、生命だ。マグマだ。I need you.の爆発やぁ!」
(もう、ぼく、意味不明)
「素直になりたいのなら、自分で動かなきゃ。ほら、いまの、きみのように!!!」

レイカは、自分が強くにぎりしめた、ファンタジスタを見つめた。
ほら、自分で動けば、こんなに気持ちいい。
自分で動けば、こんなに自由だ。
自分で動けば、知らなかった自分に会える。
レイカは、、、気がついたようだ。

ファンタジスタのスイッチを切って、
「ありがとう、やっとわかった。ほら見て、わたしこんなに、濡れてる・・・」

部屋の床が、池。20年分の液を、いっきに出しきったようだ。
その池の真ん中に立つ美しい少女は、生まれたばかりのビーナスに見えた。

そして、レイカは、
「ねぇ、ヒトミくん」
じっと、ぼくを見た。

「イレて」

レイカは、彼女自ら開き、求め、受け入れ、動き、そしてイッた。
そしていま、ぼくの腕枕で、かわいい寝息をたてている。

ぼくとのセックスで、彼女は変わったのかもしれない。
彼女を変えることができたのかもしれない。
ぼくもすこしくらい成長したのかな、と思うと、うれしい。

「レイカ様、だいじょうぶですか?叫び声が聞こえたのですが・・・」
ドアの外で、キツツキが声をかける。

レイカは眠そうに目をこすりながら、
「そろそろ行かなきゃ」
と、撮影の衣装を身に着けた。

彼女はいま、自分の足で歩き始めたんだ!
部屋を出て行くとき、レイカが
「キスして」
と言った。

「いまのわたしはとても、I need you.なの」
そしてぼくらは、長~~いキスをした。

入れ替わりに入ってきたのが、ほら来た、キツネのオネーサン。
今日はほめてもらえるかも。

「今日はほめてもらえるかも、」
このオネーサンは、いつも、ぼくの考えていることがわかる。

「なんて考えてたら、大間違いよっ」
あらま、叱られた。。。

「自分で動かなきゃダメなのは、誰?」
・・・・・。

「それを、今回学んだのは、誰?」
・・・そうだ、、、ぼく、です。

ぼくが、ぼくこそが、そうだったんだ。

いつも他人をあてにして、他人のせいにして、自分と向き合うことから逃げていた。
そのぼくがレイカを変えたなんて・・・10年早いです。。。

教訓③とにかく自分で動くのだ。

「ごめんなさい、わかりました」
ぼくのピエールをハイヒールのつま先でもてあそびながら、
「自分で女性を動かせるようになったのは、進歩ね。でもまだ、黄帯」
はいっ。

「それから、ヒトミくん」
はいっ?
「きみ、アソコって連発しすぎ。お下劣」
って、そういうことやらせてるの、オネーサンじゃないですかー。
「これからは、アソコのことをラズベリーって呼びなさい」
ラズベリー?ピエール ミーツ ラズベリー?

オネーサン、ぼくに語りかけるでもなく
「これからよ、きびしいのは」と、つぶやいた。

そうだ、先は長い。がんばろう。

に、しても、このオネーサン、ぼくの、敵?味方?