コトバのコトバ

ボクキキⅤモモコ編3:ベテランの底力。

「ヒトミくん、21だったっけ?」
「はい、そうです」

「いいなあ、まだまだたくさん、恋ができる」
「モモコさんも、恋すればいいじゃないですか」
「もうできないわ、だって、もうこんなに、おばちゃん」

ぼくは、今日ずっと感じていた違和感の正体が、やっとわかった。
この人は、昔話しかしていない。今を生きていない。自分から、あきらめている。
恋なんて、もう自分には関係ないと思っている。それじゃまいにちを、これからを、
楽しめるはずがない。
ぼくは、勇気を出して、質問をした。

「年をとることは、恥かしいことですか?」
いきなりの質問に、ぼくを見つめるモモコさん。

「もしそうなら、ぼくはもう年をとりたくない。生きていく意味なんて、ない」
モモコさん、じっと聞いている。

「恋は、とてもすてきのものなんでしょう?ぼくはまだ、恋を知らない。だから、恋をしてみたい!一生していたい。ずっとずっと恋をし続けたい!」
モモコさん、うつむいた。

「恋に適齢期なんて、あるんですか?」
モモコさん、顔を上げた。

「モモコさんは、今、とてもとてもとてもとても、すてきです!うつくしいです。昔とは、すてきさやうつくしさの種類が、違うだけです!」
モモコさん、うなずいた。

「恋は、いつも適齢期だと思います!」
モモコさん、にっこり微笑んでくれた。

「エラそうなこと言って、すみません」
いいのよ、と、小さく首を振って、口を開いた。

「ヒトミくん、今のわたしでいい?」
「い・ま・の・モモコさんがいい。今のモモコさんが欲しい」
「準備は整ったようね、部屋に戻ろうか」
そう言って、モモコさんは席を立った。

・・・・・おいおいおいおい、欲しい、だなんてよく言ったもんだよ、ヒトミ。
裸で(そりゃまあ、裸だけど)逃げ出したくなるくらい、テクも場数もレベルが違う。
年を取ることと衰えることは、別のことだ、すくなくとも、セックスに関する限り。

熟れすぎの柿の果肉に指がめり込む感触、と言うか
(なんじゃそりゃ)

創業以来継ぎ足し続けたタレの深み、と言うか
(わけわからん)

アナログレコードのノイズの豊かさ、と言うか
(なんのこっちゃ)

セックス白帯のぼくには、筆舌に尽くしがたい
(あ、こういうときに使うんだ、この言葉。いろいろ勉強になります)

いちばんすごいのは、イカないこと。
気持ちよくない感じないのではなくって、通常このへんでイキますよね、のポイントを通過して、そろそろイカないとかカラダこわしますよ、のポイントを楽に超えて、第一象限の右ななめ上彼方に向けて、上昇直線が伸びて行く。

離陸した飛行機が、大気圏の突き抜けんばかりに、上昇し続けるように。
体位変えても、攻守変えても、彼女の頂上がまったく見えない。
2時間動き続けて、酸欠で意識が遠くなるのと入れ替わるように、快感がぼくを支配する。
ピエールが悲鳴を上げている、違う、悲鳴じゃない!キモチイイイイイー、の雄叫びだ。

しかし、ここで負けるわけには、、、ここで負ける、わけには、、、こ粉、で、負ける、
輪、家、には、、こ、こ、こ、こ・・・。

そのとき、なにやら激しい振動が!じじじじじじーーーーーっ、薄れ行く意識の中、
(おや、なんだろう?ケータイかな)
→→→ファンタジスタ!!!

ぼくは、自分のバイブ力を前進力に変えて、リュックの中から這い出してくるファンタジスタを薄れ行く意識の中で見た。黒光りした、筋肉質のボディーが、こっちに向かって来る。
そして、ぼくの脇で、ぴたっと止まった。

(ありがとう、ファンタジスタ!)
ぼくがモモコさんからピエールを引き抜くと、ファンタジスタは自分からモモコさんの中へ、吸い込まれていった。

最初は、モモコさんのポテンシャルや好みを確かめるように、オーソドックスな動きで。
やがて、読めた!とばかりに、激しさを増し、突然ピタリと動きを止め、
(たぶんこれも演出だ)
そして、ゆっくりと回転を始めた。ゆるりと、ゆるりと。

この動き、どこかで見たことがある、、、あ、そう、そう、そう、走馬灯!
あきらかにモモコさんの反応が、変化した。そして、聞こえてくるもの・・・。

モモコさんのアソコと、回るファンタジスタとが、奏でる音が、メロディーに!
まるでオルゴールみたいに!

これは!
(あまりの驚きに、息もできない)

モモコさんのデビュー曲
「コンチネンタル・ダーリン」!!!
モモコさん、小さな声で、口ずさんでる、たのしそうに、思い出すように、、、超オンチに。。。
モモコさん、絶頂の一歩手前。

ファンタジスタが、不意に、動きを止めた。
どうした、ファンタジスタ、もうすこしだぞ。

そして、ファンタジスタは自ら、スポッと抜け落ちた。

オマエ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんて、、、ヤツだ。。。

最後は、ぼくが決めろと、促している。
見つめあう、ファンタジスタとぼく。
見つめあう、ファンタジスタとピエール。。。
友情・・・ひたっている時間はない。

ぼくがもういちどイレてからモモコさんがイクまで、10秒もかからなかった。
イク直前、モモコさんは、ぼくに抱きついて
「いつだって、、いま、が、、、いちばん!」←教訓④
そう言って、目を閉じた。

ドアが開いて、だれかが入って来た。だれかは、想像がつく。

「いやー、おつかれちん」
キツネのオネーサン。今回やけに、フレンドリー。

「あのー、質問があるんですが」
せっかくだから聞いてみた。
「こんなことやってて、ほんとうにおかあさんは助かるのでしょうか?」
「そうねぇ、信じることね」

「そんなぁ、、、セックスばかりやってて、いいのかなぁ」
「重要なのは、セックスじゃなくて、それを通してキミが成長することなの。
それに、姉小路家の運命がかかっているの」
「運命、、、って」

「それは、最終回まで、秘密」
「えーっ」

「大切なのは、続けること。夏休みのラジオ体操と同じ」
と言って、スタンプカードにはんこを押した。

そばで見て、ふと気がついたのが、
「あれぇ、オネーサンのアゴに1本はえてるの、ヒゲ?」

オネーサン、顔を真っ赤にして、
「イヤーーーーーーン」
とマッハで外へ飛び出した。
・・・・・と言うことは。。。。。おいっ!