ボクキキⅨタマキ編2:旅ハメの記憶。
「主人との共通の趣味が、二つあった」
なんだろう?
「旅とセックス」
いい趣味ですね。。。
「二つあわせて、旅ハメ」
ほんと、いい趣味ですね、、、旅ハメ。。。
「温泉で旅ハメ。世界遺産で旅ハメ。グランドキャニオンで旅ハメ」
スケール、でか。
「寝台車で旅ハメ。新幹線で旅ハメ。エアフランスで旅ハメ。丸の内線で旅ハメ」
最後の、旅じゃないですし、日常ですし、、、それにしても、丸の内線でどうやって!?
「夜の動物園で旅ハメしたときは、おもしろかったなあ」
なにがあったんですか?
「わたしたちのセックスを見て、動物たちが興奮しちゃって、動物園中で、うぉーうぉー、があがあ、ぱおぱお、めーめー、もう大騒ぎ」
すごそう。
「翌年、その動物園、史上空前のベビーブーム、って新聞で読んで、笑っちゃった」
アブない夫婦。
でも、以前のタマキさんは、明るい人だったんだな。
「ハプニング〇んこそば、っていうの、知ってる?」
知らない、なんだろう、それ?ってか、それよりも文字隠さないで、わんこそば、って普通に言ってくださいっ、まぎらわしいから!
「広間に大勢の男女の客が集められて、みんなおなかペコペコにしてね、小さなおわんでおそばを食べるの、何杯も何杯も」
それ、わんこそば、でしょ?
「真っ裸で」
なにぃ!
「カンタンに言うと、おそばを食べながら、セックスするの」
いろんな催しがあるものだ。
「セックスしながら、何杯食べたかを、競う大会」
「動かないと、快感はない。でもおなかは、どんどん一杯になっていく。おなかが一杯になると、動くのが苦痛になってくる」
楽しいのかな、それ。
「食べられなくなったら、そこでセックスも終了。セックスするためには、食べ続けるしかないの」
楽しくないような、気がする。
「性欲が、おそばを食べさせる。食欲が、性欲を叶えようとする。人間の二大欲望が、一つになって、かつて体験したことのない快楽を目指す」
ぼく、わかった、これ、楽しくない、絶対。
「二人でおそばを分け合い、励まし合い、いたわり合い、ココロとカラダで愛をたしかめ合う。名づけて、『ずっと、おそばに』、、、うまい!」
、、、うまい!って。
「つぎつぎに、カップルが脱落した。最後に残ったのは、わたしたち。そして、みんなの声援を受けて、ついに、イッた。沸き起こる『昴』の歌声・・・」
すごいんだか、なんなんだか。。。
「記録は、二人で1122杯」
やっぱり、、、すごい。
「い・い・ふう・ふ、でしょ?」
はい、たしかに、いい夫婦です。
「それなのに、あの人、わたしひとり残して、『ずっと、おそばに』じゃなかったの・・・」
あちゃー、ふりだしに戻っちゃった。
「お友達やわたしの親は、しばらくのんびりしていたら、って言ってくれるけど、一人になると、彼のこと考えるしかなくって、それがつらくて・・・」
だから、デメ金で働いているんだな。
「すこしでも、人の中にいようと思って。レジ係って、毎日たくさんの人と接するから、それが、わたしは生きてる、って実感になるから」
人の中にいよう、って気持ちがあるのなら、だいじょうぶ。
「でも、ときどき人生をあきらめそうになる。もう幸せな日々は戻ってこないんだ、って」
ぼくは言った。
「あきらめたら、それで終わりです。もうなにも、変わらない」
「ありがとう。わかってる」
「わかってる、でも・・・ですよね。タマキさんには、あと50年残されています。これまでよりも、長いです。なのに、もう思い出の中だけで、生きようとしている。ぼくはずっと年下だし、大切な人を失った経験もないし、なにも言う資格はないけど、運命って、ガチガチのものがあるんじゃなくって、自分でなんとか変えられるくらいには、柔軟なものだ、って感じがするんです。うまく言えなくて、ごめんなさい。でも、タマキさん、いまのままだと、柔軟な運命も、ガチガチに固まっちゃうんじゃないかって、思うんです」
「どんな素敵な人が、現れるかも知れないしね」
そうですよ、そう!
「でも、スーパーデメ金じゃ、イケメンも来ないけどねー」
って、ぼくも含めて、、、ですよね。やっぱり。ぐすん。
タマキさん、それに気がついて顔を真っ赤にして、
「あ、あ、あ、違うの、違うの、ヒトミくんはね」
ぼくは、ぐすん、なんなんですか?
「ヒトミくんは、特別。だって、わたしに、勇気をくれる」
そうかな。
「おかあさんのために、戦ってる。自分の力で、運命を変えようとしている」
なんで、それを?もしや・・・まあいい、なんとかしてあげたい。
「じゃあ、ぼくとデートしませんか?こんどの日曜日。ぼくじゃ、もの足りませんか?イケメンじゃないから?」
「ヒトミくんは、ハンサムよ。ちょっと頼りないけど」
お世辞+本音。
「じゃあ、日曜日のお昼12時に改札口でいいですか?」
「わかった。ありがとう。楽しみにしてる」
どこ行こうかな、大人の女の人の喜ぶとこなんて、わかんないや、ていうか、なんか上空からの視線を感じるんだけど。
「大人の女性がアヘアヘ喜ぶデートスポット特集」読んで準備してたんだけど、結局彼女が行きたいって言ったところは、遊園地。ご主人とよく行った場所だそうだ。
・・・ということは、そこでもシテたってこと?想像だけで、ピエールはもうムズムズだ。
とにかくフシギな一日だった。
①入場のチケットの行列に並んでも、かならずぼくの番で、窓口が閉められる。それが3度!ぼくらの入場を邪魔するように。4度目に、列に割り込みまでして(ごめんなさい)やっと入れた。
②タマキさんにソフトクリーム買ってあげたら、3秒で溶けた。おかげで、手はビチョビチョのネトネト。
③ホットドッグを食べようとしたら、パンは温かいのに、ソーセージが凍っている。
④園内のキャラクターの着ぐるみに、足を引っ掛けられて転ぶ。
⑤起き上がろうとしたら、こんどは、ぼくのスニーカーの両足のヒモがいつのまにか結ばれていて、また転ぶ。
⑥ハトにフンを落とされる。
⑦さらにカラスに、つつかれる。
⑧雲ひとつない晴天なのに、ぼくの頭上だけ雨雲。どしゃぶり→ずぶ濡れ。
いったいなにがなんなんだ?
でもタマキさん、今日は楽しいって、何度も何度も言っている。
まあ、よかったとするか。
二人で観覧車に乗った時のこと。
頂上の近くまで上がったころ、風なんか吹いてなかったのに、ぼくらの観覧車がすごい勢いで揺れ始めた。ものすごく、恐ろしく、ぐるんぐるん。彼女は悲鳴をあげて(ぼくもあげました)観覧車の中で七転八倒。
なんとかタマキさんの手をつかもうとして、バランスを崩し、タマキさんがぼくのひざの上に乗る格好になって、顔と顔が至近距離、そして揺れに身をまかせて、キス。
すると、さっきまでの激しい揺れは、あきらめたようにおさまった。