コトバのコトバ

ボクキキⅩⅡ最終編1:ヒトミの卒業式。

そう、ぼくはいま、「卒業パーティー」に向かっている。
「午前0時スタート」と、招待状には書かれている。
ずいぶん遅いスタートだ。

「準備の都合があるので、30分前には会場に来てください」と書いてある。
なにを準備?卒業生からのスピーチとかあるのかな?

「卒業できればの話ですけどね」とも書いてある。
ぜったい卒業してみせる。そして、おかあさんを、元どおりにしてみせる!って、そもそもぼくは、どこにいつ入学したんだろ?
とにかく、同封の地図を頼りに、会場へ向かう。

指示通り、30分前。九段下から坂を上って、
「たぶん、このあたりのはず・・・」
ふと、ぼくの視界を埋めつくす建造物・・・なにこれ?ブドーカン?ブドーカン!

「ヒトミくん卒業パーティーは、こちら☛」の張り紙。
やっぱり、ここだ。ほかに誰か出席するのかな?
関係者入り口のドアを開けて、月明かりを頼りに、廊下を歩く。
やがて、ホールの入り口へ。そーっとドアを開けてみると、ありゃ、ここも真っ暗だ。どこでどうすりゃいいんだろ?

そのときだ!一面に畳が敷きつめられた、広いホールの真ん中に、ピンスポットライト。よく見ると、キツネのオネーサン!
「招待状は、届いたようね」

天井からのライトで、顔に陰影ができて、歌舞伎のくまどりみたい。
つまり、怖いです、いつもより。

「卒業パーティーは、あとのお楽しみ。まずは卒業試験に、パスしなきゃね」
準備って、その30分、か。

このオネーサンと、深夜の神社で会ったときから、この冒険ははじまった。

オネーサンは、スタンプカードを投げてよこした。
スタンプカードを見ると、初期、つまりツバサさんやアユのころのハンコは、色があせてしまっている。
長い旅だった。11個のスタンプ一つ一つが、ぼくが生きてきた証だ。

いろいろな女性がいた・・・みんな、喜びも悲しみも悩みも夢も抱えて、生きていた。
その、一つ一つと向き合うことで、ぼくは強くなれたような気がする・・・。

「あのね、ヒトミくん、そんなうっとりした顔で、感動のグランドフィナーレをセルフ演出してる場合じゃないよ」
、、、すみません。

「あと、思い出しダチ、してるよ、キミのピエールくん」
ピエールって名前つけてくれたのも、オネーサンだ。

「キミ、やり残していることが、あるでしょ?」
「そういえば、いちどもイッてないしなぁ」
「そんなことじゃなくって」
「わかってますよ、もちろん」ああ、わかってるさ。

スタンプカードに、ただひとつの空欄・・・。
「誰ですか、最後の一人は?」

オネーサン、さっきにも増して妖気大盛で、
「目の前にいるじゃないの」
えっ?

「わたしじゃ、ご不満かしら?」
来たね。
「わたしアゲイン。わたしリローデッド。わたし大好評につき、キャンペーン再び!」

、、、大好評ではないですが、そうそう、神社では、あやうくイキそうになっちゃったんだ、♪まあるい緑の山手線、を思い出さなければ。でも、あれからぼくも、成長している。はず。

「ぼくも、もういちどくらいならお相手してもいいなって、思ってたところです」
「ウンッモー、ジョートー言えるようになったねー。不愉快!」
あわわわ、、、怒った?

「とにかく、ここまでは、よく来れた。でも、卒業パーティーは、きっと中止になるわ!」
ほんとに怒ってる。指ポキポキやってる。帰ろかな。。。

「&キミ、招待状を、ちゃんと読んで来なかったようね」
なんだろ?
「正装、って書いてあったはずだけど」
今日のぼくは、一着しかない黒いスーツに白いシャツ。
精一杯なんだけど、これ・・・あ、ネクタイか。

「このあいだ友達にネクタイを貸して、まだ返してもらってないんです」
オネーサン「そんなこと言ってるんじゃなぁーい!」
今日はやたらと怒りっぽいなぁ。

ぼく、「ごめんなさい、でもこんな服しか、持ってないんです」
「持ってるはずよ」
ぼくが、正装の服を?

「どんな高価なものでも、豪華なものでも、服など、しょせん虚飾。そんなもので人の目をあざむくよりも、ありのままの自分のすべてを、さらけだす。それが、男の生きる道。ならば、これ!ハダカこそが、男の正装!!!」
オネーサン、いきなりいっきに、着ていた服を脱ぎ捨てた、見事に男らしく、、、って・・・・・・エッ・えっ・エッ・ええエええエぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
うわっうわっうわっ、、、、、、、、、つい、て、るん、です、が、ぼく、と、おなじ、モノ。。。

「さあ、立ち上がれ、フレデリック14世!」
、って、あのー、ソレのことですか?っていうか、もう立ち上がってるし。
でも、ぼくのコレには、ピエールってのんきな名前(ごめん、ピエール)つけといて、ご自分のには、フレデリック14世(以後、フレディとする。フレチンも、可)ですか、あーそーですか、いいお名前ですね←いじけている。

オネーサンのきれいな顔の、数10センチ下で、ドッカンズッカンそびえている物体。。。シンプルにフクザツ。このオネーサン、というか、オニーサン、もー、フクザツ(以後、元オネーサンとする。オネチンも、可)いったい、なに者?

「ヒトミィっ!」
仁王立ちする(本体も、フレチンも)その様子は、まさしく阿修羅だ。美しく、気高く、そして、まぎれもなく男。

「ちょっと聞くが、コレ(フレディ)ついてたら男か?」
こっちが聞きたい。それついてたら、男ということになってるんじゃないのか?

「カラダが男で、ココロが女だったら、男か?」
それは難しいなあ。

「ニワトリが先か、卵が先か?」
それは難しくない。完璧に、どっちでもいい。

「アレのことは、明記を避けて、ち〇ち〇と書くべきなのか?」
、、、たぶん。

「〇ン〇ンでもいいのか?」
カタカナになってるけど、たぶん。

「18歳未満は、セックスしちゃイケナイのか?」
個人的には、別にいいと思うけど。でもやっぱり、モテるやつうらやましいから禁止。

「80歳以上は、セックスするとヘンなのか?」
人それぞれ、じゃないかなあ。

「イチロウが、区役所の戸籍係だったら、どうなのか?マイケル・ジョーダンが子供のころに始めたのが、バスケットボールじゃなくて、野球だったらどうなってたのか?みのさんがNHKのアナウンサーだったら、どうなってたのか?」
元オネーサン、もうぼくの答えを、求めていない。自分で自分に、問いかけているようだ。

「人には、人それぞれの場所がある。いちばんの場所がある。たいせつなのは、探すこと。そして自分で、選ぶこと」
なんかよくわからないけど、よくわかる。

ぼくは、考えこんでしまった。求めなくても、与えられたもので生きてきた。その場所が自分の場所なのか、自分にとっていちばんなのかを疑いもしないで、生きてきた。
でも最近は、そうじゃない。

ぼくは、なんなんだ、誰なんだ?
ぼくは、なにができて、なにができないんだ?ぼくはどこから来て、どこへ行くんだ?
知りたい知りたい知りたい。

「あなたは、それを見つけるために、ここにいるの」
そうだといいな。

でも元オネーサン、いったいなにを語らんとしているのだろう?

(実は、その発言の中に、ぼくの最大のヒミツが隠されていた。ぼくはまだこのとき、それを知るよしもなかったのである)