コトバのコトバ

ボクキキⅢアユ編3:二つの顔。

どうかなぁと思いながら、下を見ると、
アレ、もう、タワー。

「考えるな、カラダに聞け」でしたよね、ツバサさん。

「では、どうぞ」
と、ベッドの上に横たわるアユさん。
攻められてばかりいたので、受身になられるのは慣れてない、って言うか初めてだ。

「では、よろしくお願いします」
と、とりあえず一礼。

よし、とにかく攻めるか、でもどうしよう、わからんじゃないか、
あ、まだビデオやってる、そうだ、マネしちゃお。

ふむふむ、胸をうしろからわしづかみにしながら、チクビの先を指でタッチして、右足を相手の足にからませ、あいたほうの手を下半身へ、ってツイスターゲームだな、まったく。

足がつりそうになっちゃった。
ビデオの中では、カンタンそうなのに。
さすがプロの男優さんだねー、って感心している場合か。

でも、そのとき気がついたこと。
彼女は、神社のオネーサンやツバサさんのように、ぼくを激しくリードしたりはしない。
でも相手の動きに沿うように、カラダをあわせてくる。

たとえば、ぼくが右に動けば、少し先回りして、ぼくが気持ちよくなるような体勢で、受け止めてくれる。
ぼくがアレにキスしてほしいと、腰を数センチ動かしただけで、もうぼくの下半身に顔をうずめている。
彼女のアソコに触れようと、指を1センチ伸ばしただけで、指がより深く届くようなアングルで、待ち構えていてくれる。
彼女のすばらしさは、こんな場面でも生きている。感動。

でも、このセックス(女性を、カッコさきにイカせるカッコ閉じる、ってミッション)では、ヤバイ。
だって、彼女の動きは、ぼくの動きをサポートするようで、実はぼくの自由を奪っている。

つぎの動きを先回りして、封じこめながら、完全にコントロールしているのだ。
ツバサさんのような剛の技ならば、ちからで抗うこともできるかもしれないが、こんな柔の技に対する術など、この白帯くん(自虐)にあるはずもありません。

彼女のコントロールのもとで、ただひたすら気持ちよくなっていくばかりだ。
・・・ほら、気持ちよくなってきちゃった。。。

ヤバイヤバイ
(わ!舌の先をとがらせて)

キモチイイキモチイイ
(ダメだよ、そこはオシリ)

ヤバイヤバイ
(意外と、、、わるくない)

キンンンモチイイキキキモモチイイ
(あ!どうにでもして)

でもヤバイでもキモチイイ
(まだイレてもいないのに)

でも・・・そんなのドーデモイーそんなのドーデモ~イ~イ~イ~イ~イ~
(まだイレてもいないけど)

でもそんなのドーデモイー
(そうは言っても、どーでもよくはないどーでもよくはない、、、こっちの声、、、ちいさい)

でもそんなのドーデモ、、、もうギリギリ。
そんなとき、アユさんが目にはいった、、、いつもとちがう、いつもの顔とちがう、どうして?

(もしや、そういうことでは!)

ぼくはある真実を、どうしても確かめたくなった。
そして彼女の両足を開き、上に覆いかぶさって、アレをさらに、ア・リトル・ハーダーにして、チェックイン希望!

彼女は突然のぼくの読めない動きに、驚いた表情を浮かべかけるが、そんなことお構いなしに、、、イン!

(やっぱりそうか!!!)

そのときのアユさんの顔を、ぼくは一生忘れない。

切れ長の目は、興奮に充血し、視線は宙を舞っている。
ぽてっと厚い唇は濡れて光り、吐息の分だけ開いている。

予感は、予感をはるかにこえて、あたった。

なんてすてきだ、なんてすばらしい、なんてすけべだ。
こんないい女、歌麿じゃなくてもガマンなんかできない。

わたしでよかったら、の地味顔(失礼)が、これほどまでに悩ましく化けるとは!!!
ちがうぞちがうぞ、化けたんじゃない、これは彼女がはじめから持ってたのだ。

ぼくが、どうしても確かめたかった真実。
女性の顔は、ひとつじゃない。

セックスしてるときと、してないとき。
どっちもホンモノ。どっちも彼女。

その人のすべてなんて、カラダをあわせて、ココロをかさねてみないと、決してわからないんだ。
そう確信した瞬間だった。

アユさん、ぼくはいまのあなたを、あなたに見せたい。
あなたは、こんなにすてきだ。

もう二度と、「わたしでよかったら」なんて言わなくていいよ。
自信を持って、自分の名前を言えるから。

アユさんとセックスしてきた男たちは、ぼくの下で、甘い声でアエギ声をもらす、この悩ましい女に会いたかったのだ。
この、いまのぼくのように。

アユさん、聞いてくれ、
あなたはすばらしく、
(そして耳元で、そっと告げた)、

「エロチック、だ」

・・・その一言で、彼女は微笑むように、イッた。
その寝顔は、タイかどこかの仏さまのようだった。

「やるねー」
また、来た。

仏さまのあとは、おキツネ様。
(なんでこの部屋のカギ持ってるんだよう)
そんなぼくの無言の抗議も、もちろんお構いなしに、
「けっこう素質あるんじゃないのー」
と言って、スタンプ帳にハンコを押してくれた。

「ヒトミくんに、とてもいいことを教えてあげよう」
それは?

「教訓②女の顔は、ひとつじゃない」
それ、ぼく、さっき言ったじゃないですか。

「セックスの前かがやく顔と、セックスでかがやく顔」
確かにそうですね。

「それに気がつけば、セックスは何倍も楽しくなる。もっと女を愛せる」

上級者男子になると、セックスのときの顔をあらかじめ想定して、その顔から逆算して、シテみたい女性をチョイスできるようになるそうだ。
スゴイ。
ぼくもそこまでなれるのだろうか?

「まずは、女性を好きになることね」
どういうこと?
ぼくは女性を、好きじゃないの?

「それは今後の展開の中で」
展開?

「ひとつごほうびを、あげましょう」
なんだろ。

「ヒトミくんのアレに、ピエールという名前をプレゼントしましょう!」
ちょっとぉ、なに勝手に、ネーミングしているんですかぁ!

「これからもヒトミくんをよろしくね、ピエール」
オネーサンは、ぼくのアレをむぎゅっとつかんで、2371号室から出て行った。

・・・ピエール・・・か。
「なあ、」
ピエールに話しかけてみた。

「セックスって、いろんなことを教えてくれるよな」
ピエールは、黙って聞いている。

「でもそれって結局、人が教えてくれているんだなあ」
感謝だよな、と思いながら、エッチビデオの続きを見た。