地平線。
つまらないわね、地平線。
いいよ、広大だよ、感動するよ、って聞いてたのよ。
だから、地平線という「ブツ」があると思ってたの。
その「ブツ」が私に何か素晴らしい体験をさせてくれる。
「ブツ」じゃないのね、線なのね、まあ、線ってついてるけど、
まさか線だけとはね。
でね、私これ、線ですらないと思うの。
空があって地面があって、それでその継ぎ目が結果的に線になってるだけでしょ?
神様は積極的にそこに線を引こうと思ったんじゃないと思うの。
神様は空と地面をつくってそこで気が済んでどこか次の場所に行っちゃって、
それを見た人間が、お、空だ、お、地面だ、おいおいあそこに線だべ、
フムフムなるほど線に見えるだべ、っていきさつだったと思うの。
地球黎明期のこぼれ話。
ま、成り立ちはどうであれ、とりあえずコヤツは線である、としましょ。
でね、線、おもしろい?線に感動する?
感動するって言ってたお友達、もともとセンスのない人だなと思ってたんだけど、
パープルにブルー合わせたりね、あの人の感覚こそ感動ね。
「街で暮らしてたら一生出逢えないから!」って涙目で言ってたけど、
出逢えるわよ、って言うか、描けるわよ、私。線だもん。
ちょっと気がついたことがあるので逆に教えてあげたいんだけど、
地平線がある=(イコール)何もない、ということなのね。
シャネルも、ヴィトンもないし、ディーン&デルーカもマクドナルドもない。
あらま、後ろ側も地平線。
シャネルも、ヴィトンもないし、ディーン&デルーカもマクドナルドもない。
あの人、こんなことも言ってたわ。
「地平線を眺めながら、その向こうに何があるか思いを馳せるんだ」
それを聞いたときの私の想像力によると、
まず地平線という恐ろしく感動的な「ブツ」があり、
地平線の手前からはその先は見えないが、
そこについてるドアを開けて向こうに行くと、
あらまこんなところに「ほにゃらら」が!ってことだったのよ。
あの人には何が見えたか聞かなかったけど、
今の私にはコーラの自動販売機くらいしか思い浮かばないわ。
ケータイ、圏外じゃない。i-phoneだから?
タクシー呼べないじゃない。さっき返さなきゃよかった。
この際だからバスでもいいわよ。バス停はどこ?バス停「地平線前」。
エフエム東京「TOKYO COPYWRITERS’ STREET」2010年5月放送